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クリス智子 クリス智子
クリス智子

party glass

CHRIS TOMOKO

party glass

CHRIS TOMOKO

 家にはガラスのものが多めである。器やグラス、花瓶はもとより、ガラス製の動物のオブジェ、コーヒーテーブルもガラスの天板。窓好きということもあってリビングの窓は多めで、家具の引き出しも、正面が小窓になるようなガラスのものを好み、部屋の仕切り代わりにガラス戸を取り付けた場所もある。なんなら、頭の中には、アンティークの窓ばかりを集めて、小屋を作りたい妄想まである。ガラスが異様に好きみたいだ。何かが写りこんで現れる偶発的な景色や、製作時にうねうねと火の中で蠢く液体のようなものの、ある瞬間を捉える静と動、相反する現象の共存も魅力。ガラス工房で職人さんの仕事を拝見したり、体験で江戸風鈴やグラスを作ったことがあるが、どこか生々しい生き物ものみたいだった。熱く強靭なものを感じる。そこからの潔い透明感。

 以前観に行ったアール・ヌーボーのガラス展で、エミール・ガレをはじめとする作家たちの作品、はたまたガラス文化初期の、ガラスというよりも陶器のような、濁りもある古代のガラスをみているうちに、時代を遡りながら見る装飾や技術といった人工的なことにも改めて感動したが、そもそもガラスって自然の材料から生まれた造形なのか、ということの方にハッとしたことがあった。自分で作ったことはないから、その配分などは難しいのかもしれないが、珪砂、ソーダ灰、石灰石、というシンプルな原材料。しかも、はじまりは海!紀元前4000年のエジプト、砂浜での焚き火をしているとき、岩塩で潮風を遮ったところ、熱で岩塩が溶けて、砂と反応して生まれたのが、世界で最初のガラスという。一気にロマン注入。ひとつひとつ、好きの理由を拾うのはおもしろい。

 夏は海もいいし、ガラスもいい。我が家で夏に使用頻度が上がるのが、ガラス作家・伊藤太一さんのパーティグラス 。(ちなみに、伊藤さんはご家族5人みなさん、木工、染織、服飾デザインなどをされるクリエーター一家で、山口県にある工房は、いつか訪れてみたい場所の一つ)このパーティグラス は、15年以上前に、たしか東京の大好きな器屋さんで初めて目にしたと思う。シンプルな縦線のデザイン、いくつも並べると色の遊びが目に愉しい。パーティグラス 、って可愛い、とくすっとした。たしかに、この華やかな色たちが集まると賑やか。そして人が集まる時は、自分のグラスがわかりやすい。人と話しながら、グラス片手に動いたりしていると「これって、わたしのだっけ?」ということがよくある私からすると、色で覚えられるナイスグラスなのだ。透明なグラスとは、また違った楽しみがある。形もとてもスッキリしているので、コップという感じで気軽さもあっていい。好きな色をひとつ選んで、自分だけの日常の愛用品にするもよし。いくつか揃える時に、1,2色でまとめるのもいい。今年は夏が始まる前に、久しぶりに伊藤さんのパーティグラス を増やした。色をまとめるか否か迷ったが、あえて増やしてみた。初めてのイエローもアクセントになって気に入っている。

 さて、こうして書いている間に、手元の携帯には関東の梅雨明け情報が入り込んだ。やっとかー!堂々たる夏、到来。今年は、一段と暑くなりそう。いや、毎年、そう思っているかな。パーティグラス片手に、ワイワイできる時間を、そろそろ計画しよう。

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