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クリス智子 クリス智子
クリス智子

時間を外す、時間を写す

CHRIS TOMOKO

時間を外す、時間を写す

CHRIS TOMOKO

 またまた1週間が過ぎようとしている。週あたまのワサワサした気持ちにひと段落し、駆け抜けた達成感と、もっとゆっくり見たかった景色や味わいたかった言葉を反芻するのが、束の間の週末の入り口である。今週の出会いの中で印象的だった言葉は「時間を外す」と「時間を写す」。時間に関する話はいつも興味深い。

「時間のようなものを外そうしとしている」というのは、東京オペラシティ・アートギャラリーで個展が始まった画家の野又穫さんの言葉。時間を「外す」という表現を新鮮に思うと同時に、野又さんの作品に描かれる独特の気配が一気に腑に落ちた。いつも、目の前に巨大な建造物がそびえるどこかに連れていかれ、それは何かが始まろうとしている生まれたての未来なのか、すべてが終わった静けさなのか、不思議な時空なのだ。わたしは一人っきりで、そこに立っているのに、懐かしい風が吹くから寂しくはない。時間を外された感覚だったのか。SFが好きだったことも影響しているとのことだった。「どこなのかいつなのか不明のまま」に読み進めるあの感じ。久しぶりにSF小説も読みたくなった。展示は9月24日(日)まで開催しているので、ぜひ体感してみていただきたい。

さて、同じ日に番組ゲストにお迎えした写真家の上田義彦さんは「時間のゆらぎのようなものを写そうとしている」というようなことをおっしゃった。時間を感じるような、揺れのような、そんなようなことをずっと撮りたがっていると。これまた、作品を拝見すると、そのとおりの場所に連れて行ってもらえる。写真に映る中国の雄大な風景や、そこに立つ少女の表情からだけではない、時間。その日、偶然にも、わずか一時間ほどの間に、相反する「時間」のことを聞き、時間というものに対して、自分なりの対峙する考えや力があると、そのひとから生み出されるものは、時間に耐えうる物になるのだなと、思った。

 自分はどうだろう。ラジオの生放送に流れる時間は、いつまで経っても一日の中では特異だ。私にとってのそれは、得体の知れない生き物のような感じ。最初の頃はその生き物に翻弄され、毎日やられっぱなしの日々だったけれど、いまでは、その得体の知れない生き物と少しは遊ベるようになった。時間とは、なんなのだ?ではなく、時間と自分は、どうなのだ?なのだろうか。また、時間の話のつづきを。

*上田義彦写真展「いつでも夢を」2023年7月26日(水)- 8月13日(日)代官山ヒルサイドテラス・ヒルサイドフォーラムにて

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