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クリス智子 クリス智子
クリス智子

さざんかさざんか

CHRIS TOMOKO

さざんかさざんか

CHRIS TOMOKO

 今年は「季節はずれの」というフレーズとともに天気予報を耳にすることが多い気がする。気がすると言うのは、案外、自分の感覚の記憶って曖昧だなぁと思うこともあるからだ。「こんなに暑い日ってなかったような...」とか「4月に雪が降るなんてびっくりだね」などと人と話したあと、3年前にも雪が降った4月の写真が出てきたり、調べてみると15年前30年前、つまり自分も生きていた時に全然あった話ということがあるのだ。とはいえ、今年はさすがに、だろう。関東では、11月の最高気温の記録更新(27.5度)、2日連続の夏日は過去初、今年の夏日の日数も143日以上で更新つづきだ。まだ11月も日があるので更新を重ねないとも言い切れない。11月の最高気温の27.5度は、100年ぶりの更新とのことで、さすがに生きてはいなかったが、やっぱり過去にもあったわけだ。はて? 以前、気候変動の専門家の方にお話を伺った際、地球の大きな歴史の、何万年といった周期で見ると氷河期がまたいずれくるからとおっしゃっていた。はて。。100年前の関東での27.3度を、人々はどう感じていたのだろう。

もう一つ、天気に関して心に残っている話で引き合いにだすのが立川志の輔さんの新作落語の一節「近頃の人は窓を開けて天気をみるのではなく、テレビの画面で知るんだな」。昨今の荒れた天気、一日の中でもめまぐるしく状況を考えると正確な情報を知ることの重要性もある一方で、全面的に頼りすぎかも?と思う。窓を開けて、今日はどんな感じかな?と「ほかに耳をすます」(心)と「全身の感覚を使う」(身)は、情報をして知る(頭)と同じか、以上のことがあるように思えてならない。

 さて、今年はどの花も早めに咲いたのは実感としてある。過去数年の写真遡ると、1週間ほど早いものも多い。写真は記録のためではなく、咲いた美しさにハッとして撮っているのに、最近では首をかしげて写真のデータを遡ることも増えた。この秋、庭の金木犀は7年前と比べて2週間満開時期が遅く、山茶花も遅れ気味。不思議と、秋冬の花はゆっくりである。山茶花は、やっと昨日、花開いた。山茶花は今の家に越してきて、その魅力を知った植物のひとつだ。山茶花と聞くと、童謡「たきび」の中の「さざんかさざんか咲いた道、焚き火だ焚き火だ落ち葉焚き」は口をついて出る(そして、よく口ずさんでいたおばあちゃん思い出す)のだが、最初のうちは、椿か山茶花か見分けがつかながった。(どちらもツバキ科)この色々が枯れて散っていく冬の入り口に、突然、深い緑の葉の間に鮮やかなピンクの花たちが、ぱんぱんと咲きだす様は、なにか特別な力を毎年感じる。我が家は生垣のように整えていないので、のびのび山茶花。わたしには、いつも自由に楽しくお喋りしている風に見える。今年も咲き出し、安堵。ここから今年の締めくくりまで、山茶花を愛でながら過ごすのが楽しみだ。冬に咲く花はいろいろあるが、目下、私の推しは山茶花である。

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